ZEN CLUB

豊かな暮らしを創るコミュニティ・ペーパー

Number.480

心に残ることば3

Relay Essay 語りの部屋

人生は、8合目からがおもしろい。

-田部井淳子-
(登山家)

『一歩、一歩』
      登山家 田部井淳子

かんたんなことばであるが力強さを感じることばである。

田部井さんのことばの端ばしにこのフレーズが使われ、強くこころに響くものである。

彼女の最初の〈一歩〉は、小学生のころ担任の先生の引率で茶臼岳・朝日岳に登った時である。先生に「ゆっくりでいいからね。」といわれながら
『人と、競う必要が無い』
『自分のペースで一歩一歩進めば、かならず頂上に立つ事が出来る』
この時の〈一歩〉が原点にあるのだと思う。

次の大きな〈一歩〉は、1975年5月6日、エベレスト最終アタックであろう。その時のことを、『何度もピッケルにもたれ休む、一歩が本当に苦しい、しかしこの一歩が、必ず終わる時が来ると思って歩いた。』と述べています。

女性として、初めてのエベレスト登頂、山好きの主婦が一夜にして、世界的なヒロインになってしまい、本人は、なぜ自分だけが、…(日本の女子隊の代表として登ったのになぜ私だけが注目されなければ、ならないのか)…と悩んだと述べています。

そして、すべてを受け入れ、登山家としてまた〈一歩〉ふみだすのです。富士山やネパールでのごみ拾い、チョプルンという村では福島のリンゴの植林。登山活動と同時に、山岳環境の保護に精力的に活動されました。

2011年3月11日、東北地方を東日本大震災がおそいました。

被災者を招き近郊の山にハイキングを企画し、自然に触れ合うことで、元気になってもらうことが、登山家に出来ることと活動をされました。2012年からは、被災地の高校生を日本一の富士山に登らせたいと毎年100名規模で続けてこられてきました。

初めて山に登る子を『一歩一歩、ゆっくりでいいよ』『必ず、頂上に着けるよ』と励ましている姿に感動を覚えました。

最後の〈一歩〉は、昨年の7月、被災地の高校生と共に富士山を登った時、元祖七合目までご主人の手を借りながら、一歩一歩、足をゆっくりと上げながら登り、後から登ってくる子供たちを励ます姿には、涙をさそわれます。

昨年6月、弊社の安全大会で、田部井さんに講演をして頂き、私たちにたくさんの感動を与えていただきました。当日講演が終わり、『これから、福島へ行くの。富士山の打ち合わせに』といってお別れしたのがこころに残ります。

平成28年10月15日 帰らぬ人となる
 ご冥福をお祈りします。

『一歩一歩行けば、必ず頂上にたてるという事がよくわかった。あきらめないこと、何事も頑張れば出来る事を学びました。』参加した高校生からのお礼状

寄稿:K.I