ZEN CLUB

2021年06月号 Number.530

ふるさとの逸品を訪ねて

第6回 和歌山県日高郡みなべ町

皮にうっすらと塩が吹いた白干梅。

塩漬けと天日干しから生まれる伝統の味
梅仙人が漬ける白干梅しらぼしうめ

果樹王国として名高い和歌山県。紀伊水道に流れ込む黒潮の影響や日照時間の長さなど、恵まれた自然条件のもと、みかんや柿、梅、桃などのさまざまな特産品が栽培されています。中でも、梅は全国の60%以上を占める収穫量を誇り、「南高なんこう」はその代表品種。みなべ町は、その発祥の地といわれています。

風土に培われた梅の最優良品種

和歌山県の中部に位置するみなべ町は、県内でも有数の梅の生産地。海の近くまで山地が延び、平地が少ないこの地域では、山の傾斜地を利用して主力品種の南高梅が栽培されています。歴史は古く、江戸時代の初めに、紀伊田辺藩主安藤直次あんどうなおつぐが米のできないやせ地や山の斜面に生命力のある梅を植えさせたのが始まりと伝わります。その後、明治の後半になり、旧上南部村の高田貞楠たかださだぐす氏がひときわ大粒の実をつける優良樹を発見。この「高田梅」をルーツに持つ品種が1950(昭和25)年に発足した「梅優良母樹調査選定委員会」で数十種の中から最優良品種に認定され、南高梅というブランドが誕生したのです。

「大粒で果肉は厚く、皮も薄いため、口に入れるととろけるような食感が楽しめます」。そう話すのは、みなべ町で梅農家を営む永井恒雄ながいつねおさん。町内に点在する梅園は、およそ東京ドームの三分の一ほどの広さがあるそうです。また、栽培だけでなく、ご自身の健康法をもとに梅の普及活動にも熱心に取り組み、地元では「梅仙人うめせんにん」と呼ばれ慕われる存在です。

梅を育てて50年余りになる永井さん。現在も、草刈りや剪定作業を一人でこなしている。「毎食2粒、自分で漬けた白干梅を食べるのが元気の秘訣」と笑う。(和歌山県日高郡みなべ町東本庄)

梅干しの基本、しょっぱい白干梅

永井さんの栽培方法は、肥料を減らしながらそれに応じて農薬も減らしていく「減農薬栽培」。「肥料と農薬は関係が深い。特に化成肥料※1を与えすぎると、病害虫が発生する原因になり、さらに農薬を使うことになる」といいます。植物の自然の力を引き出し、足らないものだけを与えるのが仙人流梅栽培の極意です。

6月上旬、まず収穫するのは梅酒用などに出荷される青梅です。一方、梅干し用の梅は、樹の上で完全に熟すのを待ち、自然落下した実をネットに受けて収穫します。ほんのり紅がさした完熟の実をタモ※2ですくってコンテナに集め、水洗いの後すぐに塩漬けに。「塩分濃度は約20%。ミネラルが豊富で甘みのある塩にこだわっています」と永井さん。1か月ほど漬け込んだ後、天日で干せば、保存のきく昔ながらの「白干梅」ができあがります。みなべ町ではこの一次加工までを梅農家が担い、梅干しとして販売されるほか、加工業者が塩抜きをした上で調味梅に仕上げています。

梅雨明けを待ち、塩漬け後の梅を数日間天日に当てる。(永井さん提供)
小高い山の傾斜地に広がる梅畑。
青々と茂った葉に守られるように成長する梅の実。

紀州梅干し専門店 福梅本舗