ZEN CLUB

2021年06月号 Number.531

ふるさとの逸品を訪ねて

第7回 香川県小豆郡小豆島町しょうずぐん しょうどしまちょう

素朴で奥深い島の味わい
小豆島の手延べそうめん。。

瀬戸内海・播磨はりま灘に浮かぶ離島、小豆島。温暖な気候に育まれたオリーブや醤油、佃煮、ごま油など、数々の名産品で知られています。中でも手延べそうめんは、三輪みわ(奈良県)、播州ばんしゅう(兵庫県)と並ぶ三大産地の一つ。島ならではの伝統の手延べ製法が、今も脈々と受け継がれています。

真砂家に受け継がれるそうめん作りの伝統を大切に守る、三代目博明さんと四代目淳さんのご夫妻。

代々語り継ぐ「喜之助」の志

小豆島にそうめんづくりの技が伝えられたのは、およそ400年前。島民の一人がお伊勢参りの途中で大和の三輪に立ち寄り、製麺方法を学んで島に持ち帰ったのが始まりといわれています。そうめん製造は冬が最盛期。雪が降らず、瀬戸内の寒風が吹き寄せる気候風土や冬場の農閑期に家族で生産できたことが、島に広がった大きな要因だといいます。

「小豆島の製麺所は、家内工業が多い。うちも、家族5人で代々伝わる麺作りを守っています」。そう話すのは、真砂喜之助まさごきのすけ製麺所の四代目 真砂淳(あつし)さんです。初代が農業の傍らそうめん製造を始めたのは1920(大正9)年頃。その後、屋号に掲げる二代目が専業化し、自ら島中を巡ってそうめんを振る舞い、自慢の味を広めていったと伝わります。「美味しく、きれいなそうめんを皆さんにお届けするのが、祖父喜之助のこだわりだったようです」。二代目が試行錯誤を重ね築き上げた味と思いは、祖父から父へ、父から子へと語り継がれ、今も麺作りの現場に息づいています。

熟成が生む食味食感

小豆島そうめんは、小麦粉、塩、ごま油というシンプルな原材料で作られます。それゆえ、「独自にブレンドした小麦粉や赤穂の塩など、自分たちの麺作りに適したものを選び抜いています」と真砂さん。製造工程は、小麦粉と塩水を混ぜる「オデ」と呼ばれる作業から始まり、こねた塊を帯状に延ばす「イタギ」、帯状の麺を2本合わせてローラーに通し層をつくる「アワセ」へと続きます。熟成※の時間をおきながら、麺を少しずつ細く延ばす工程は、ごま油を表面に塗り乾燥を防ぐそうです。1ミリ前後の細さになるまで、りをかけ延ばしては熟成を繰り返し生まれるコシの強さが手延べの持ち味。「日々の気温によって塩分濃度や熟成を微調整するなど、そうめんは繊細。〝天日干し〟の工程まで、職人が見守りながら作りあげています」。

三大産地の中でも、完成したそうめんをさらに1年間寝かせる三輪や播州と違い、小豆島では冬に製造したものが次の夏に出回ります。そのため、生麺のようなもちっとした食感を楽しめるのも特徴の一つ。艶やかなそうめんが、夏の食卓を彩ります。


2本の麺帯(めんたい)を1本に合わせる「アワセ」。この作業の回数によって麺のコシが決まる。
天日干しを終え、屋内でもそうめんをじっくり乾燥させる。
穏やかな瀬戸内の海に浮かぶ小豆島(いずれも真砂淳さん提供)

有限会社 真砂喜之助製麺所