ふるさとの逸品を訪ねて
第8回 岐阜県大垣市

清らかな水から生まれた大垣の郷土菓子
水都名物 水まんじゅう。
岐阜県 西濃地方に位置する大垣市。木曽川、長良川、揖斐川の三河川の伏流水がもたらす自噴水に恵まれ、古くから水の都と呼ばれてきました。人々の暮らしを潤す、豊かで清冽な地下水。その恵みを活かして誕生したのが、大垣の夏に欠かせない伝統の水まんじゅうです。
水の都が誇る夏の風物詩
かつて、地面を30センチ掘れば水が湧き出たといわれるほど、大垣は全国でも有数の自噴帯※1にあたります。古くは各家庭に井戸舟※2があり、豊富な地下水を利用して日々の暮らしが営まれていたそうです。市内には、自噴する井戸が今も数多くあり、澄んだ湧き水を汲むことができます。水まんじゅうは、そんな名水のまちに伝わる夏限定の生菓子です。
「明治30年頃、地域の豊かな水を活かした和菓子として考案されたのが始まりと伝わっています」。そう話すのは、大垣城に程近い旧城下町に本店を構える「御菓子つちや」の堀富則さん。1755(宝暦5)年創業のつちやは、大垣藩十万石の藩主戸田家に御用菓子を納めていたという老舗和菓子店です。代表銘菓は、契約農家と自社農園で栽培する蜂屋柿を原料にした「柿羊羹」。土地の素材を用い、自然味にこだわった商品づくりが信条のつちやでは、渾々と湧く地下水もまた大切な素材の一つといいます。「名水から生まれた水まんじゅうは、大垣ならではの郷土菓子。明治以来の伝統と文化が受け継がれています」。
暑さを凌ぐみずみずしい甘味
ほのかに餡が透ける涼しげな生地、つるりと喉を通る滑らかな食感。水まんじゅうの持ち味は、生地のくず葛粉にわらび粉を加えることで生まれるといいます。「当店では、吉野の本葛を使用。わらび粉との絶妙な配合によって喉越し良く仕上げています」と、製法にも老舗のこだわりが現れます。まず生地は、材料を火にかけ、半透明になるまで練り上げます。小ぶりの陶器に流し入れ、熟練の職人が炊く餡玉を包み、蒸す工程へ。生地の透明感は、蒸すことによって増すのだそうです。氷水に浮かべ、水ごとすくって食べるのがご当地流。つるりと喉越しも良く、生地とこし餡との一体感を楽しむことができます。
時間とともに透明感が失われ、食感も変化するため、できたてを早めに食べるのがよりおいしく味わうための条件です。つちやでは、店に足を運ぶことができないお客様にも作りたての美味しさを味わってほしいと、家庭で作れる「水まんじゅうキット〜初級編〜」を開発。手作りの楽しさとできたてを味わう感動を届けています。
水まんじゅうの販売期間は、一部店舗を除き5月上旬〜8月末までとなっています。





