ZEN CLUB

2021年 11 月号 Number. 535

ふるさとの逸品を訪ねて

第11回 栃木県那須郡那須町

自家生乳を約40日間熟成した【ウォッシュタイプ】の「りんどう」。香りが穏やかでクセが少ないと評判の逸品。

生乳の鮮度が美味しさを生み出す
搾りたてミルクのチーズ。

栃木県の最北端、主峰茶臼岳ちゃうすだけがそびえる那須連山の裾野には、日本有数の酪農地帯 那須高原が広がっています。雄大な自然に囲まれ、のびのびと育てられた牛や山羊の新鮮な生乳。その美味しさをチーズという形に仕立て上げているのが、「那須高原今牧場いまぼくじょう」のチーズ工房のみなさんです。

心地よい飼育環境が育む良質の生乳

今牧場の始まりは1947(昭和22)年。この地に入植した初代が、乳牛1頭から酪農をスタートさせたといいます。その後少しずつ数を増やし、1990(平成2)年、現在の場所に新たに牧場を開設した頃には108頭に。フリーストール牛舎 ※1を導入するなど、先進的な牧場経営は二代目である現代表の今耕一(いまこういち)さんにも受け継がれ、那須でも有数の酪農家として、1998(平成10)年には「畜産大賞最優秀賞」を受賞されています。

「現在、牛はホルスタイン種を中心に、チーズづくりに適したブラウンスイス種、ジャージー種など約300頭。山羊はザーネン種を30頭飼育しています」。そう話すのは、加工部門の今範子(いまのりこ)さん。酪農部門で搾乳の経験もあるという、チーズ工房の責任者です。原料となるのは、毎朝5時から搾乳される牛や山羊の新鮮なミルク。そのミルクの源になるエサには自家栽培したコーンサイレージ ※2を与えるなど、牛たちの健康管理には細心の注意が払われています。

牧場直送のミルクを唯一無二のチーズに

チーズ工房が立ち上がったのは2012(平成24)年のこと。自家牧場の牛乳に、付加価値を付けたいという想いがきっかけだったそうです。以来、良質な生乳で作るチーズは人気を呼び、すべて予約で埋まってしまう商品もあるといいます。目指しているのは〝ミルクの良さを最大限に活かしたチーズづくり〟。「ミルクはちょっとした温度の変化にも敏感に反応します。品質を保つには、空気に触れないことが大切。製造室は搾乳室と隣接していて、空気に触れず鮮度の良いミルクを加工することができるのです」。

乳質、鮮度ともに最高の状態で作られるチーズの数々。牛乳製の「ゆきやなぎ」は、朝7時に受け取った生乳を工房内で加熱殺菌し、レンネット ※3で固めたフレッシュタイプ。10時には牧場内の直売店に並びます。「牛乳の甘さと香りがしっかりと残り、お豆腐のような食感が特徴。サラダのほか、冷や奴風の食べ方をおすすめしています」。山羊乳からは、さわやかな酸味が後味に残る熟成チーズ「茶臼岳(ちゃうすだけ)」、さっぱりとした風味が楽しめるフレッシュチーズ「朝日岳(あさひだけ)」が作られます。那須の自然を名に持つ個性あふれるチーズには、今牧場のチーズづくりへの熱い思いが込められています。

チーズ工房の皆さん。左から製造責任者の葛西健人さん、今範子さん、チーズ職人の寺田英さん、工房補助の花塚悠李さん。
フリーストール牛舎でのびのびと育てられる乳牛たち。
山羊の健康状態をチェックする葛西さん。チーズづくりは動物の健康観察から始まる。
温度・湿度管理が徹底された熟成庫に並ぶチーズ。
濃厚なコクとほどよい酸味が特徴の牛乳チーズ「なすの」。
「なすの」の製造工程。一つ一つ丁寧に表皮に炭をまぶしていく。
チーズ工房には売店が併設され、できたてのチーズが購入できる。

有限会社 那須高原今牧場