ZEN CLUB

2022年 04 月号 Number. 540

<ZENグループの今>プロジェクトing

愛知県岡崎市 県営上和田住宅

「三方よし」に高まる期待 PFI方式整備事業

財政負担の軽減、良好なサービス維持・提供、民間の事業機会の創出──。公共事業ではPFI(民間資金等活用事業)へのニーズが高まっています。

公共施設の老朽化、厳しい財政状況、人口減少など、全国の自治体は適切な公共サービスの維持に多くの課題を抱えています。これらの課題を解決するため国も推進しているのが、自治体と民間事業者が公共施設等の整備事業で連携し、コストの効率化を図る民間資金等活用事業(PFI:Private Finance Initiative)です。

そのような中、ZENグループ・株式会社麦島建設(本社・愛知県名古屋市)は、愛知県営上和田住宅(岡崎市)を建て替えるPFI方式整備事業(第2次)において愛知県と特定事業契約を締結しました。受注までのストーリーを、担当の同社営業部・赤塚翔太氏に話を伺いました。

PFIは「三方よし」で国も推進

従来型の公共事業では自治体が設計・建設・運営などの方法を決め、民間事業者にそれぞれ分けて単年度ごとに発注していました。

一方でPFI事業は自治体の企画・計画に基づき、民間事業者に設計・建設・運営を複数年度にわたって任せるもので、効率的なプランを提案競争させて最も優れた事業者を選定する、という違いがあります。

国は、財政負担の軽減、良好なサービス維持・提供、民間の事業機会の創出につながる「三方よし」の制度として、公共施設などの新設や改修、運営・維持管理コストの見直しにはPPP(官民連携)/PFIの活用を積極的に検討するよう推進。

愛知県も財政健全化を図るため、PFI事業を積極的に導入しています。

受注に向けて全力投球

愛知県岡崎市の県営上和田住宅PFI方式整備事業(第2次)について、県は2021年4月に実施方針の公表、説明会を開催。

老朽化した既存住棟を解体・撤去し、シンプルで機能的、かつ耐用年数70年を前提とした住棟への建て替えを、民間のノウハウを生かして実施することを目指しました。9月に入札を執行し、翌月、入札書を提出した3グループが事業者選定委員会に出席。提案内容に関する約15分間のプレゼンテーションと質疑応答に挑みました。

同社は株式会社ユニホー、株式会社市川三千男建築設計事務所の3社で麦島建設グループを結成し、総勢13人で担当。

赤塚氏は「2020年に別の県営住宅におけるPFI方式整備事業で一歩及ばず、悔しい思いをしました。そのため今回は長い時間をかけてプロジェクトに取り組み、必ずリベンジを果たしたいと考えていました。入札からプレゼンテーションまでは短期間でしたが、当日までにしっかり準備をして当グループの思いを全て伝えさせてもらいました」と語ります。

結果、入札価格評価点(40点)と事業内容評価点(60点)を合計した総合評価点で最高点を獲得した同グループが最優秀提案となりました。落札額は22億7166万5000円(税込)、事業期間は2021年12月から2026年6月までを予定しています。

各社1人ずつのプレゼンテーションに臨んだ赤塚氏は「まずは無事に受注できてホッとしました。プロジェクトに関わる多くの人たちの努力が無駄にならないよう、責任感を持って仕事に励んできて良かったです」と笑顔を見せました。

「事業目的のキーワード」に対応した麦島建設グループの基本方針
事業目的のキーワード 麦島建設グループの基本方針
建物 ・社会経済情勢の変化に対応 入居者ニーズとその変化に対応可能な計画
・民間ノウハウを活用 愛知県水準と民間ノウハウのベストミックス
・シンプルで機能的 無駄をなくした機能合理性の追求
・耐久年数70年 効率の良い維持管理への配慮
住環境 ・地域環境との調和 マクロとミクロの双方の視点からの地域環境との調和
・安全で活気ある住環境 住民間のコミュニケーションが図れる配置設計
施工 ・安全と地域に配慮した実施体制 地域の安全に配慮した実施体制と施工計画
・効率的かつ円滑に更新 実績に基づく無理のない事業遂行体制

評価のポイントは?

既存の老朽化した県営住宅を解体後、3棟の新棟を建築する今回のプロジェクトでは、どのような点が評価され、受注につながったのでしょうか。

まず基本方針は、県から示された目的「県営住宅ストックを安全で活気ある住環境へ効率的かつ円滑に更新する」について十分に理解・検討を重ね、「かみ砕いて大きく三つの柱に解釈しました」と赤塚氏。

このうち「建物」の柱ではシンプルで機能的、かつ耐用年数70年を掲げ、長期にわたって時代のニーズに応えられるようにしました。赤塚氏は「公共事業ですのでランニングコストの軽減に努め、メンテナンスに手がかからない仕様や間取りを追求しました」と語ります。

事業実施にあたっては、統括責任者が県担当者への報告や連絡を一元管理する点や、工事に係る一切を当社が選任する監理技術者が統括するなど明確な指示系統を構築する点も評価につながりました。また事業に関わる構成員を愛知県内に本社を置く企業のみに限定したことで、地域経済にも大きく貢献する事業となりました。

3棟を一定的につなげ、住民同士の交流が増えるように計画された今回のプロジェクト。間取りは、入居予定者に高齢者が多いことを意識し、将来、介護が必要になった場合にリノベーションしやすい設計としました。さらに単身者やDINKS、子育て世帯の流入などにも期待し、入居者の裁量で広々としたLDKを利用できるよう工夫しています。

また維持管理への配慮として、屋上防水と外壁仕上げ塗材の仕様を修繕周期が重なるようにしたことで、外部の足場を組むのが1回で済むなどコストを削減。施工計画においても、これまでの実績を生かし、品質を確保したうえでの工期短縮を約束しています。

さまざまな角度から評価を受けた今回の提案。赤塚氏は「たくさんの方が住む公共住宅として、地域環境や周辺住民にも配慮しながら施工内容をご提案させていただきました。通常の案件と比べて事業期間が非常に長いので、社会の動きにも注意しながら工期の管理をしっかりしていきたいと考えています」と意気込みを話していました。

挑戦を続け、時代のニーズに応えていく

1999年に「民間資金等の活用による公共施設等の整備等の促進に関する法律(PFI法)」が施行されて以来、2020年度までに実施されたPFI事業は全国で875件。2020年度は新型コロナウイルス感染症の影響で事業数は落ち込みましたが、それまでは右肩上がりに増えていたことから今後もPFI事業は拡大していくものと考えられています。

「当社としてもPFI事業に引き続き参入し、ノウハウを蓄積していくことが、今後、さらなる公共事業に取り組んでいくうえでプラスになると考えています」と赤塚氏。民間のノウハウを幅広く活用し、安くて質の良い公共サービス提供を実現できるPFI事業への期待が高まる中、社会のニーズに応えるため、同社の挑戦は今後も続いていきます。

麦島建設グループの事業実施体制
マンションから戸建、商業施設、公共施設まで、理想をカタチに「麦島建設」
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