ZEN CLUB

2024年 05 月号 Number. 565

<ZENグループの今>プロジェクトing

株式会社ライフポート西洋 北関東支店

コミュニケーションを深め、新しい提案にもつながる

10年以上にわたる「5S活動」継続の理由

 株式会社ライフポート西洋 マンション管理事業本部 北関東支店(埼玉県さいたま市)では、「5S活動」としてフロントの社員4名ほどで管理物件へ赴き、管理員と一緒に清掃や整理を手伝っています。なぜこのような活動を続けているのか、小林洋介支店長と、管理サービスグループの佐久間洸弥さんにお話を伺いました。

10年以上続く「5S活動」

同社が2011年3月に設立した北関東営業所は、2023年4月から北関東支店となり、現在12名が働いています。

5S活動は10年ほど前からスタートした取り組みです。5Sとは「整理」「整頓」「清掃」「清潔」「しつけ」から頭文字のSをとったもの。小林支店長によると当時の営業所長の呼びかけで、管理員が業務時間内にできない仕事などを社員で取り組むようになったのが始まりだそうです。

具体的には月1回、4名ほどの社員でチームを組み、物件の屋上清掃や管理室内の整理、植栽剪定、グレーチング清掃などを実施。主に管理員が勤務時間内にできない作業や、高齢の管理員では難しい作業が対象だと言います。各物件で課題のある作業を、社員がサポートするのはなぜなのでしょうか。

社員同士のコミュニケーションの場として

小林支店長は理由について、5S活動を通じて社員同士のコミュニケーションが深まり、ほかの社員が担当している物件を見ることで新しい気づきを得ることもあるからだと言います。

「やはり現場へ一緒に足を運ぶからこそ、分かることはたくさんあります。社員同士、行き来の車内でもたくさん話しますし、先輩から後輩へいろいろなことを教えられる機会にもなっています」(小林支店長)。

2023年4月入社の佐久間さんは千葉県生まれ、東京育ち。そのため支店が管轄する埼玉県や群馬県、栃木県内を5S活動でまわるのが新鮮だそうです。そのうえで5S活動は自身の成長や新たな発見につながる活動であると感じています。

「入社してすぐのころから、5S活動で自分が担当していないマンションへ行く機会があって、とても良い勉強になりました。自分の担当物件にはない設備を見せてもらうこともあります。逆に自分が担当する物件に5S活動で来てもらって、先輩たちから、こうしたらいいのでは? といったアドバイスをもらえるのもありがたいです。

普段は一人で担当物件を回ったり、管理組合の会議に出たりしているので、ほかの社員の方達とチームで行動するのは貴重な機会です」と話します。

課題解決のきっかけづくり

一方、管理員の業務支援とはいえ5S活動の目的は、お困りごとをなんでも解決する「便利屋」になることではありません。

5S活動が目指しているのは課題解決のきっかけづくりであり、管理員や管理組合と協力し、物件の状態を見て必要な提案を行うことが第一。この活動によって、物件の美観や
安全性を向上させるだけでなく、管理組合との良好な関係を築くことができています。

「実際、我々がサポートできることは限られています。たとえば植栽が伸びたからといって、いつでも駆けつけるわけにはいきません。5S活動として伺う日は社員で作業しますが、以降は造園業者に外注するなど、管理組合への提案のきっかけになればと考えています」(小林支店長)。

そのため管理員はもちろん、管理組合の人と一緒に作業して認識を共有し、今後の維持管理について話すようにしていると言います。

これまでの事例では

たとえば、埼玉県内の物件で敷地内の植栽が伸びていた事例では、5人のフロントが訪問し、剪定作業に3時間半従事しました。脚立を使わなければ届かない高所の剪定を、高齢の管理員が一人で行うのは危険です。フロントが複数名で安全確保を行なったうえで剪定作業を実施しました。

この5S活動によって物件の美観が保たれ、周辺の安全な通行にもつながりました。それに加えて大きな成果となったのは、物件の管理員と、管理組合理事長にも立ち会ってもらい、今後の植栽管理について考えるきっかけを持てたこと。

結果として専門業者による定期的な剪定をフロントから管理組合に提案することができました。

また埼玉県内の別物件では、屋上の清掃を4人のフロントで担当しました。屋上のドレンに泥が堆積して雨水が流れず、大雨のときは廊下に水たまりができる、という住民からの苦情があったものの、管理員は1人で午前中のみ勤務という状況では余力がなく、また安全面でも危険でした。

そのためこの5S活動でもフロントらの作業をきっかけとし、管理組合に定期的な特別清掃の実施を提案することができたと言います。

また、管理室の整理として、書類整理や保管している鍵のリスト作成など、細かな点でサポートすることもあります。「高齢の管理員だと小さな文字が読みにくいので、鍵の番号管理などは我々が手伝うようにしています」(小林支店長)。

困難と課題はあっても

とはいえ、業務時間内に5S活動を継続していくのは簡単なことではありません。「自分の業務をいったん置いてほかの物件へ行くことになるので、調整も必要ですし、5S活動ばかりに時間を割くわけにもいきません。活動の継続には社員の理解と協力が必要です」(小林支店長)。

支店で管轄する物件は70以上あり、管理員や担当のフロントから5S活動への要請があっても、月1回の実施ではすべてのリクエストにすぐに応じることはできません。また夏や冬に屋外で実施する作業は社員にも負担があります。

それでも5S活動を続けていくことには意義があると小林支店長は話します。

「5S活動は、あくまで課題を解決するためにはどうしたら良いか、考えるきっかけづくりであり、我々がなんでもリクエストに応える、ということではありません。現場に足を運び、管理員や管理組合の方々と一緒に状況を見て認識を共有し、今後について提案する最初の一歩、みたいな位置付けです。提案まで至らなくても、管理員やお客さまとコミュニケー
ションをとる、ということは全ての業務においてとても意義があることです」(小林支店長)

また社員同士の連携や成長を促進する貴重な機会でもあることから、今後も継続していきたいと言います。

佐久間さんも「管理員さんに喜んでいただけると嬉しいですし、5S活動をしているところに住民の方が来られて、直接お礼を言っていただけた、という話も先輩から聞いたことがあります。これからもマンションにお住まいの方たちの暮らしの充実化、日常業務の円滑化のために続けていきたいです」と話していました。

敷地内の植栽の剪定作業。脚立を使用する高所の作業などは必ず複数名で安全を確保して行う
エントランスなどの清掃作業。複数名で行うことで、人や自転車・車の通行など事故につながる危険を防止し、効率もアップ
雑草などの除去。グレーチング(主に金属製の格子状のふた)内に土砂が堆積し粘土状になっており、除去により機能を回復それぞれ、今後の対応を検討し管理組合に提案する
右から、北関東支店 小林洋介支店長、佐久間洸弥さん