ZEN CLUB

2022年 10 月号 Number. 546

<ZENグループの今>プロジェクトing

東京都千代田区 せいようSDGsプロジェクト

EV普及を後押し マンションの充電設備導入サポート

カーボンニュートラル実現のため、電気自動車(EV)へのシフトが求められる中、株式会社ライフポート西洋は今年度からSDGsプロジェクトとして、マンションへのEV充電設備の導入を積極的にサポートしています。その狙いや想いについて、ライフポート西洋の常務取締役でマンション管理事業本部長の赤城修氏と、業務統括部マネージャーの安藤正和氏にお話を伺いました。

世界で進む脱炭素の動き

カーボンニュートラルとは「温室効果ガスの排出を全体としてゼロにする」こと。カーボンニュートラルの実現には、二酸化炭素の排出量をゼロにする「脱炭素」の取り組みが重要です。そのため電気自動車(EV)など走行時に排ガスを出さない車へのシフトが世界中で加速しています。

日本でも2021年の施政方針演説で、2030年代半ばまでに国内での乗用車の新車販売でEV100%を実現する、と明言。東京都ではさらに前倒しし、2030年までに目指すと表明しています。

 一方、EVが普及するには充電設備の整備・拡充が急がれます。総務省の調べ(※1)による「住宅の建て方別割合」では約42%が共同住宅で、年々その割合は増加。特に関東大都市圏では過半数の住宅が共同住宅です。そのためマンションに充電設備を整備すれば、買い替え時にEVを選択する人は増えると期待されます。しかし現状では、EV購入者の9割は一戸建てに居住。マンションの居住者は1割に過ぎません(※2)。

未来につなげるSDGsプロジェクト

このような中、ライフポート西洋(東京都千代田区)は脱炭素の取り組みを進める「カーボンニュートラルプロジェクト」として、マンションへのEV充電設備普及について検討を開始。国連で採択された持続可能な開発目標・SDGsへの取り組みとして、2022年からはさらに環境問題や防災などにも拡大させ「SDGsプロジェクト」として推進することを決定しました。

 「東京の一部の区では集合住宅に住む世帯の割合は8割を超えるにも関わらず、充電設備の設置は進んでいません。このままでは国や都が掲げるEV推進の目標は達成が困難です。そこでマンション管理に携わる会社として、まずは充電設備の導入をサポートしようと考えました」(安藤氏)。

 プロジェクトの展開によって若い世代に同社の取り組みをPRする狙いもあります。「若者たちは学校でSDGsについて教わっています。マンション管理に取り組む当社がどのような形でSDGsの目標達成に取り組んでいるのかを若い世代にもお伝えし、地球の未来について一緒に考えたいと思いました」(赤城氏)。

充電設備導入の課題とメリット

マンションのEV充電設備導入で課題となるのは、居住者の総意をいかに得るかです。

「100世帯があれば100通りの考えがあります。現時点でEVの所有者は少数で、設置工事費の負担や使用された電気代の徴収方法などが問題となります。将来的には新車販売のEV義務化があり、活況な中古マンション市場を考えれば充電設備の設置で資産価値の上昇が期待されますが、現状の課題がクリアされなければ賛同は得にくいのが現状です」(安藤氏)。

また赤城氏は10年前、EVの充電設備に関する研修会に参加。「当時はEVの所有者だけ駐車場代を高くする案や、都度、数百円の電気代を払ってもらう案を考えました。しかし管理員が予約管理から使用料の徴収まで担うのは負担が大きく、正直、当時は充電設備の設置を提案するのは難しいと感じました」と語ります。

その後、テクノロジーが進化し、あらゆる業界でデジタルトランスフォーメーション(DX)が加速。マンションのEV充電設備の管理を、スマートフォンなどで一括運用できるサービスも登場するようになりました。そのうちの一つ、ユアスタンド株式会社(神奈川県横浜市)が開発したアプリサービス「ユアスタンド」は、EV充電設備の予約管理や電気使用量の徴収がスマートフォンの操作で完結。利用者の便宜が向上するとともに、管理組合の業務削減につながります。

また設置費用については、充電器本体および設置工事費などを合わせて100万円を超えることもありますが、普及拡大のため国などが補助金を交付。うまく活用すれば設置にかかる負担を減らすことが期待できます。

2022年度はSDGsプロジェクトの初年度ですが、すでに10件程度の管理組合が導入に向けて検討を進められており、同社では2025年までの導入目標を500件と掲げ取り組んでいます。

本社駐車場に充電設備を整備

一方、ライフポート西洋もSDGsの取り組みを進める中で社用車をEVに変更し、本社駐車場に充電設備を設置しました。実際に営業担当者がEVを運用して得られた経験は、導入の提案にも生かせるでしょう。また貯めた電気を災害時に非常用電源として活用すれば、災害時のリスクマネジメントにもつながります。

日本全体の二酸化炭素排出量のうち、5割超が企業からの排出分、その内の2割は中小企業が占めています(経済産業省)。中小企業が脱炭素に向けて取り組む意義は大きく、大企業と比べて投資余力が少なくても、できることをやっていくことが企業価値にもつながります。国土交通省によれば、国内の二酸化炭素排出量の15.5%は自動車から排出されたもの。つまり、エンジン車との価格差が縮む今、社用車の軽EVへの切り替えは中小企業にとって選択肢の一つです。

安藤氏は「EV充電設備の普及だけではなく、SDGsの目標達成のためにマンション管理会社として最大限、お手伝いしていきたいと考えています。その結果、マンションの資産価値が上がれば幸いです」と期待。また、赤城氏も「マンション管理がSDGsの目標達成につながる仕事であることを、社員らにより強く意識してもらい、夢を大きく持って働いてほしいと願っています。そのうえでSDGsの取り組みをビジネスに活かしていくことが、当社の将来につながると信じています」と話していました。

マンションのEV 充電設備の制御・予約・決済を一括で運用できるアプリサービス「ユアスタンド」。居住者はアプリ内で簡単に予約ができ、マンションのEV 充電設備を利用することができる。また、アプリ上でユーザー登録(クレジットカードの登録を含む)を行うため、キャッシュレス決済にて運用でき、管理組
合の業務として予約管理や電気使用量の徴収が必要なく、アプリで一括管理できる。

今回お話を伺った、株式会社ライフポート西洋
マンション管理事業本部 業務統括部 マネージャー 安藤正和氏