ZEN CLUB

2023年 10 月号 Number. 558

<ZENグループの今>プロジェクトing

北海道 札幌市 moyuk SAPPORO (モユク・サッポロ)

札幌の人の流れを変える再開発事業に参画

新たなランドマークの空間活用を提案

2015年11月に札幌市より事業認可を受け設立した「南2西3南西地区市街地再開発組合」。2018年3月に権利変換計画の認可を受けたことで、札幌駅前通と狸小路商店街の交差点に位置するエリアの再開発事業がスタート。商業・ビジネス、居住空間を備えた複合施設が造られることになり、株式会社ユニホーは、低層階の商業エリアの空間活用を提案することになりました。
今回は再開発事業の始まりから2023年7月20日にグランドオープンするまでの流れをご紹介します。

再開発で変わり始めた札幌の街並み

現在、札幌市のあちこちで再開発事業が進み、街の様相は大きく変わり始めています。

今回取り上げる「南2西3南西地区第一種市街地再開発事業(札幌市)」は、そのひとつ。この再開発事業は、1986年に札幌市中心部商店街活性化協議会が結成されたころから既に始まっていました。

その後、「南2条西3丁目再開発を考える会」が設立され、2015年に札幌市から事業認可を受けると、街づくりが具体的に進み始めました。

ちなみに「南2西3南西地区」は、札幌市の繫華街、すすきのエリアの一角に位置しています。札幌駅前通りと狸小路商店街の交差部にあり、西側0.6haの広さが対象エリアで、再開発にあたってはさまざまな課題がありました。

商業やビジネス、都心居住を主体とする複合機能を取り入れたものにし、低層階には人のにぎわいを創出する商業機能を持たせるということ。さらには人々が交流できるような多目的広場や路面電車のループ化に対応した滞留空間の整備、交通環境の改善などです。

これら多くの課題を解決すべく、複合施設の建設が決まった後、デベロッパーとして再開発事業に参画することを決めたという株式会社ユニホー(以下ユニホー)。札幌市全体で再開発が活発化してきたのを機に、同社でも街づくりにチャレンジしようという機運が高まったといいます。

そして、複合施設の低層階に入る商業施設の空間活用について提案することになり、街のにぎわいを創出するというテーマをもとに、札幌市や再開発の組合に空間活用について一つひとつヒアリングを重ねながら、進めていくことになりました。

行政や地域と検討を重ねた空間活用

2023年7月20日に開業した複合施設「moyuk SAPPORO(モユク・サッポロ)」。「モユク」は、アイヌ語で狸(タヌキ)を意味し、mo(小さな)とyuk(えもの)が語源です。

狸小路商店街に位置していることから、日常のちょっとしたうれしいモノやコトが集まることを願ってつけられた名前です。

建物は111.55メートルのタワーで、9階から28階には133戸の分譲マンション、B2階から7階までが商業施設となり、北海道初出店・初進出のテナントが続々と登場し注目を集めています。

商業フロアをどのような空間にするか──それは地域全体の人の流れに影響を与えるものです。商業施設という大きなテーマを受け、ユニホーは空間活用の検討を進めていきました。

企画を立案し、何度も組合の会議に協議をかけ、地元の方々や行政からの意見も伺っていく。その繰り返しのなかで出てきたのが、都市型水族館でした。

パートナー企業からさまざまな案が上がってきました。その案を協議にかけるなかで、行政、地元の人々、テナントの方々にも喜んでいただけるものをということで最終的に水族館を作ることに着地しました。

水族館を作ると決まった後、大変だったのは人工海水装置の導入。膨大な初期投資と高い技術力が必要となるなか、さまざまな関係者の力を借りながら進めていきました。

そして、ようやく都市型水族館『AOAO SAPPORO』が誕生したのです。屋内でのペンギンの展示、自然の生態系を再現した「ネイチャーアクアリウム」、生物の特徴にフォーカスした 43 本の水槽が立ち並ぶ「ライブラリーアクアリウム」など、250種 4000点(植物を含む)の生物を展示。

これらに加え、札幌市博物館活動センターと連携した全長約7mもの「サッポロカイギュウ」の復元骨格標本の展示や、札幌市立大学と連携して「コミュニケーションえほん」を制作するなど、さまざまな取り組みを行っています。

2023年7月末、グランドオープン

7月20日の開業日には、平日にもかかわらず開店前から500名以上の行列ができ、地元での期待値の高さがうかがわれました。

午前10時30分から開始されたオープニングセレモニーには、元北海道日本ハムファイターズの斎藤佑樹さんも参加してテープカットが行われるなど、大いに盛り上がりました。ユニホーにとって初めてのことばかりで苦労の連続だった再開発事業。開業後1カ月たった今も連日多くのお客様にご来館いただき、好評を博しています。

 すすきの交差点には、「南2西3南西地区第一種市街地再開発事業(札幌市)」以外にも、この秋開業を目指した複合施設が建設中で、4丁目プラザの跡地にも新たなビルの建設が始まるなど、札幌市は今、大型の再開発が続いています。これから街がどのような変貌を遂げていくのか、目が離せません。