ZEN CLUB

2022年 07 月号 Number. 543

不動産・建設関係のトレンド

核家族化、IoT、リモートワーク時代とともに移り変わる住宅デザインのトレンド

昭和の初め、祖父母とにぎやかに暮らす三世代家族世帯が主流だった日本。高度経済成長期には核家族世帯が増え、1960年に約2,220万世帯だったのが、さらに単身世帯も増えたことで、2020年には約5,570万世帯に増えています。
近年では新型コロナウイルス感染症の影響でリモートワークが進み、住まいの拠点も郊外へと移っています。こうした暮らしの変化と共に、住宅デザインも進化し続けています。
そこで今回は、時代と共に移り変わる暮らしと住宅デザインの変遷を振り返り、トレンドの傾向をみてみましょう。

時代背景や家族の形を色濃く反映してきた住宅デザイン

1923年に関東大震災が発生した際、木造住宅の被害が大きかったことから首都圏では急速に鉄筋コンクリートの公共住宅が広まりました。一方、地方では三世代以上が同居して暮らすケースが多く、まだ木造一戸建てが主流でした。

1940年の終戦後はバラックなどの粗末な仮設住宅が並んでいましたが、高度成長期に入り日本経済の回復とともに、住宅不足を解消すべく登場したのがプレハブ住宅でした。

プレハブ住宅は、工場で生産された木材や部材を用いて、現地で建設していく建築手法で生産工程が標準化されています。そのため、短期間で一定の品質担保が可能ということで重宝されました。団地やマンションなどの高層住宅が次から次へと登場したのもこの時期です。

1970年代には核家族化が進み、家族とともに過ごすスペースとプライベートな空間を分けるようになり、2階建ての家が増えました。1980年代には和からフローリングへと欧米スタイルに移行。

2000年代に突入すると、地中海やプロバンスなどのように明るく自然を感じさせる南欧スタイルや、シンプルモダンでありながらデザイン性の高い北欧スタイルなど、さまざまなタイプのスタイルが好まれるようになります。住宅デザインには時代背景や家族の形が色濃く反映されてきました。

新居購入の5割強が注文住宅を希望
自分らしく暮らすための「自由度」を重視も

2021年(株)リクルートの調査によると、現在新居購入を検討している人の5割強が注文住宅を希望しており、2019年から3年連続で最多。中古マンションが30%で、初めて新築マンション29%を僅差ながら上回る結果になっています※1

これまで日本の住宅市場では、新築住宅の購入が一般的でした。高度成長期には経済的な余裕もあり、中古住宅のリノベーションという選択肢はあまり考えられませんでした。日本では新築住宅は年数がたてばたつほど価値が下がるのが一般的で、中古住宅のニーズは伸びなかったのです。

しかし今は中古をリノベーションして住む人も増えています。ライフスタイルに合わせて間取りやインテリアを変えられるなどの「自由度」が大きなウェイトを占めるようになりました。今も住まいへの価値観が少しずつ変化しているといえるでしょう。

また、10年の間で和室が減少し、シューズクロゼットのような収納スペースのニーズが拡大。

新居を購入することで解決したい課題についての質問で一番多かった回答が「収納が狭い」で24%、「省エネ・断熱性能が悪い」が14%でした。ちなみに、「最寄り駅から遠い」は12%、「通勤・通学時間が長い」は7%と、リモートワークやオンライン授業が広がった影響か、この2項目は減少傾向にあります。

また経済産業省が「2020年までにハウスメーカー等が新築する注文戸建て住宅の半数以上でZEH(ゼッチ:ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)の実現を目指す」という政策目標を掲げたことにより、高断熱で夏は涼しく冬は暖かい、エネルギーを極力必要としない住宅の導入率が増加しています。ZEHによって、光熱費などは平均で月あたり8,060円下がるという試算も出ています※1

今後5年以内の住み替えの目的/今後5年以内の改善(リフォーム/建て替え)の課題

新型コロナや花粉症などを防ぐ健康を守るための住まい方

いつでもどこでも働ける柔軟性が大切と「働き方改革」が叫ばれつつも、顔を合わせて話すことを重視する日本企業の多くでリモートワーク化は進まず、難しい状況でした。しかし、新型コロナウイルス感染症が日本でも拡大した2020年以降、オンラインミーティングが「世界の常識」として広く認知されたことで、一気にリモートワークが加速。自宅でもオンラインミーティングができるようなワークスペースの確保や、間取りの自由度が重視されるようになりました。また都心から郊外へと住まいの拠点を変えたり、平日は都心で週末は郊外で過ごす二拠点暮らしをしたりする人も増えるなど、私たちの暮らし方にも大きな影響を与えています。

玄関に手洗いができる場所を設置する、玄関からバスルームまで直行できる動線にするなど、ウイルスを家に持ち込まない工夫にもニーズが高まりました。これはコロナ禍が影響したことは間違いありませんが、以前から花粉症対策としてのニーズもあったものが、より注目されたといえるでしょう。

「個別化」された住みやすい我が家への高まる永住意向を支える「自由度」

「持家長期継続居住者の住宅に対する意識調査」※2の予備調査では、今後住み替える意向があると答えたのは約16%、約84%が住み替え意向のない永住派でした。国土交通省の調査結果※3でも、マンションへの永住意識が過去最高の62.8%となり、前回調査よりも10.4%増加。永住意向の高まりが伺えます。永住のためにシニア層がリフォームを希望する大きな理由には、バリアフリーの導入や耐震・防災の強化があげられます。

また、IoTで照明や家電をつなぎ操作を可能にするスマートホームも一般化しつつありますが、それは便利さの追求というだけでなく、一人暮らし高齢者の見守りや暮らしのサポート、医療、防犯・防災対策などにおいても、さまざまなシーンで活用できると期待されています。

家族のあり方や暮らし方の多様化に即して今求められる、より高度な「個別化」と「自由度」の実現に、テクノロジーの進化もますます不可分の要素となっています。

TOPIC

「家」は住まうためだけのものじゃない。
らしく・楽しく暮らす家「NESTAシリーズ」

住む人の思い描くイメージをカタチにした住まいを提案する大成ビルドの注文住宅「NESTA」シリーズ。
普段の暮らしにサーファーズスタイルを取り入れ、住みやすさと使いやすさを組み込んだ動線設計に遊び心のある「サーフスタイル」をはじめ、究極のマルチスペースを趣味の拠点にする「ガレージスタイル」や、愛犬・愛猫との楽しい暮らしを考え、家の中と外の境界をできるだけ取り払った「ワンニャホースタイル」など、そこに住まう人が「らしく・楽しく」暮らせる家をご提案しています。

海から帰ったらウエットスーツのままシャワーへ。もちろん温水で真冬も快適

直接ガレージにアクセスできる書斎。ワンランク上のリモートワークを!

愛猫に合わせて壁のパーツを自由に変えられるから、いつまでも飽きずに遊べます

ワンポイント コラム

空間に自然を取り入れる「バイオフィリックデザイン」

1984年、アメリカの生物学者エドワード.O.ウィルソンが提唱した「人間には“自然とつながりたい”という本能的欲求がある」という概念=バイオフィリアを反映した空間デザイン、それが「バイオフィリックデザイン」です。森を歩くと癒されたり、川のせせらぎや鳥のさえずりを聞くと心が落ち着いたりするのは、人間が生まれながらに持っているバイオフィリアの作用によるものです。

ビルなどの人工物に囲まれた都市生活、とくにオフィス空間では機能性や合理性が優先され、植物を置く場所や管理する人員、自然光を取り入れる窓もない場合も少なくありません。しかし、視界の中に緑が見える量(緑視率)が高まるにつれ、安らぎや爽やかさなどの心理的効果が向上します。16カ国のオフィスワーカー7,600人を対象に行われた調査では、植物や自然光などの自然的な要素が身近に存在するバイオフィリックデザインによって、生産性が6%、創造性や幸福度は15%もの向上につながることも確認されました。オフィスなどの職場こそ、意識的に自然を取り入れる必要があります。

オフィスや暮らしの空間に緑を置くことは以前から行われてきましたが、それらは主に装飾のための意味に重点が置かれがちでしたが、近年ではその認識が少しずつ変わりつつあります。バイオフィリックデザインのもたらす効果が証明され、より大きな規模で導入されることも増えています。