ZEN CLUB

2024年 04 月号 Number. 564

不動産・建設関係のトレンド

新NISAの「成長投資枠」でもはじめられる 不動産投資「REIT」とは

「日本人は現金が好き」と言われます。キャッシュレス決済の普及も遅く、個人保有の現金は100兆円を突破しました(日本銀行2021年発表)。
背景には高齢化や、日本は現金決済が便利で安心であること、超低金利で預貯金のメリットが低いことなどが挙げられます。
しかし今年からはじまった「新NISA」をきっかけに、投資への関心が高まりを見せています。いまこそ「不動産投資」について考えてみましょう。

不動産投資の種類はいろいろ

資産には一般に「預貯金」「有価証券」「不動産」の3つが挙げられますが、中でも不動産は現物資産としての価値に加えて、インフレに強く、活用の幅が広いという特徴があります。

自ら住むことができ、他者に貸すことで安定した家賃収入(インカムゲイン)を得ることもできます。情勢によって価格の上下はありますが、売却益(キャピタルゲイン)も不動産投資の目的のひとつといえます。

投資対象は大きく分けて3つ、アパートやマンションを1棟丸ごと所有し経営する「一棟投資」、分譲マンションの1室を所有し賃料収入を得る「区分投資」、所有する戸建住宅を貸し出し入居者から賃料収入を得る「戸建投資」などがあります。

ほかにも駐車場やトランクルーム、民泊や福祉施設などさまざまな投資スタイルがあり、資金や立地などの条件によって最適解は変わりますが、重要なのは「分散投資」でリスクを抑えることです。

例えば、区分投資は投資額が抑えられますが、一部屋しかなければ空室の間は収入がありません。一棟投資でも、災害などで地価が下がれば丸ごと評価額が低減してしまいます。資産価値が変動しづらい不動産ですが、長期的に安定した収入を得るためには、リスク分散は欠かせません。

「REIT(リート)」は不動産の分散投資

不動産の分散投資としては、投資先をひとつのマンションの中でも複数戸にしたり、エリアや立地条件を分散したり、また物件の竣工年をずらすことで修繕費用の発生時期を分散することができます。

複数の物件を所有するような大きな資金はないという人でも、少額から不動産投資を始めることができるのが「REIT(リート)」、国内外の不動産信託に投資するもので、日本ではJAPANのJをつけて「J-REIT」と呼ばれます。

REITの仕組みは、投資家から集めた資金で不動産を購入、外部の専門家が資産運用し、賃貸収入や売買益を投資額に応じて投資家に分配するというもので、物件の経営・運営は運用会社に委託します。

株式などに比べ不動産は価格の変動が小さく、経済の波に左右されにくい「安定した収益性」がメリットですが、REITはさらに住宅、商業施設、オフィスビル、ホテルなど投資対象が幅広く「分散投資が可能」という点もポイント。そして新NISAの成長投資枠が利用可能なため「非課税の恩恵」も受けられます。

新NISA「成長投資枠」とは?

株式や投資信託などの収益には税金がかかりますが、一定額まで非課税で運用できる税制優遇制度が、2014年から始まったNISAです。それが今年から、限定的だった非課税期間が無期限になり、非課税投資額の上限が大幅に拡大した「新NISA」がスタートしました。

「つみたて枠(旧つみたてNISA)」と「成長投資枠(旧一般NISA)」が併用できるようになるなど、より柔軟に投資を行えるようになり、この「成長投資枠」はREITを含む投資信託などにも投資することができます。

分配可能な利益の90%を超える額を投資家に分配するREITは、一般的な株式よりも分配金が高くなる傾向にあります。

新NISAでは「つみたて投資枠」と「成長投資枠」の併用で年間360万円まで投資でき、非課税保有限度額1,800万円(成長投資枠は1,200万円)まで分配金を非課税で受け取ることができますので、REITでの非課税の恩恵は注目に値するといえるでしょう。

新NISAやREITもメリットばかりではなく、元本保証はありません。元本割れのリスクを理解して、万が一損失が出ても生活に影響が出ない余裕資金を原資とすることが鉄則。投資の目的やリスク許容度を考えて、運用商品を選びましょう。

旧NISAと新NISAの比較

金融庁「新しいNISA」を参考に編集部作成