ZEN CLUB

2022年 12 月号 Number. 548

不動産・建設関係のトレンド

住まいの「これから」を考える リフォーム資金計画

住まいの「これから」を考える リフォーム資金計画

家族の増加、建物の老朽化、生活スタイルの変化など、リフォームをする理由は人それぞれ。
また、ひと口にリフォームといっても、建物の状態によっては、同じ内容の工事だとしてもかかる費用が大きく異なります。
それではどのように資金計画を立てればいいのでしょうか?
リフォームにまつわる【お金】について取り上げます。

“想定外”に備えて余裕を持った資金計画を

リフォームをする際、まず第一に気になるのは費用面です。リフォームには決まった価格がなく、工事会社によって金額が異なります。

解体してから追加工事が発生する場合もあり、工事の内容によっては確認申請が必要となる可能性も出てきます。リフォームの資金計画を立てる際は、余裕を持って計算しなくてはなりません。

まずは複数のリフォーム会社に工事の見積もりを依頼します。3社程度を目安に依頼し、金額だけでなく項目も比較できるようにすること。後述しますが、この時に適用される補助金や助成金があるかどうかも合わせて相談してください。おおよその費用を確認し、自分に合ったリフォーム会社を選びましょう。

中古住宅を購入してからリフォームする場合は、購入価格の2割以上の頭金を用意するのが理想的です。長く住むことを視野に入れていて、入居費用と生活予備費の貯蓄があるのであれば、頭金を1割ほどに抑えることもできます。

住宅購入とリフォームでそれぞれにローンを組む場合は、将来の家計のことも含めて余裕のある資金計画を立てたいところです。

「低金利」にもデメリットあり ローンを組む前に知っておきたいこと

住宅ローンを組む場合、定年退職までに完済でき、かつ毎月無理のない金額に設定するのが基本です。

住宅ローンの金利には3つのタイプがあり、低金利のものに多い「変動型」や「固定期間選択型」は、結果的に返済額が上がる可能性もあります。一方で「全期間固定型」は、金利が高めですが、変動がないため資金計画を立てやすいのがメリットです。

リフォームローンは、借入限度額が1,000万円未満であることが多く、住宅ローンと比べて審査も簡潔なことが多いのが特徴です。

注意したいのは、住宅ローンと比べて金利が高いこと。住宅ローンがある方の場合、ローンの借り換えを行うことでリフォーム資金を捻出することも可能です。具体的には2つの選択肢があります。1つ目は住宅ローンを金利の低いものに借り換える方法。月々の支払額で浮いた分をリフォームローンに当てることができます。

もう1つは、住宅ローンとリフォーム費用を一本化する「リフォーム一体型住宅ローン」に借り換える方法です。総返済金額が増える可能性もありますが、月々の支払額を抑えたいという方にはおすすめの方法です。

国や自治体が提供している補助金・助成金も要チェック

リフォームを支援する補助金制度は数多くあります。主なものは右図の6つ。

「こどもみらい住宅支援事業」「既存住宅における断熱リフォーム支援事業」「次世代省エネ建材の実証支援事業」「長期優良住宅化リフォーム推進事業」「介護・バリアフリーリフォーム補助金」「各自治体のリフォーム関連助成金」です。

リフォームの補助金は、事業者登録を受けている業者でないと申請できないものもあるため、見積もりを依頼する際に補助金の申請ができるかどうか、忘れずに確認しましょう。

自治体が独自に提供しているものについては、住宅がある地域の窓口に問い合わせるか、一般社団法人住宅リフォーム推進協議会が提供している「地方公共団体における住宅リフォームに係わる支援制度検索サイト」でチェックできます。

また、原則として、国が提供している補助金・助成金は併用することはできません。しかし「介護保険×自治体が提供する補助金・助成金」や「国が提供する補助金・助成金×自治体が提供する補助金・助成金」といった組み合わせであれば、併用できるケースもありますので、事前に確認してみましょう。

相続税対策にもなる減税制度が適用されるリフォームとは

減税制度もチェックしておきたい項目です。減税制度が適用されるのは、所得税と固定資産税。前者については、減税制度を活用するための方法が2パターンあります。10年以上の住宅ローンでリフォームした場合には「住宅ローン減税」、それ以外の場合は特定のリフォームに適用する減税制度を利用できます。

減税対象となるのは「バリアフリー」「耐震」「省エネ」「同居対応」「長期優良住宅化」といったリフォームです。なお、固定資産税については特定のリフォームに適用する形となりますが、同居対応は減税対象ではありません。

そのほかに覚えておきたいのは、贈与税の非課税措置です。通常、年間110万円以上の贈与を受けた際に贈与税が発生します。

しかし、リフォームの資金として両親や祖父母から金銭を受け取った場合、耐震や省エネ、バリアフリーの場合は1,000万円まで、それ以外の場合は500万円までが非課税となります。

相続税対策となる可能性もあるため、大規模なリフォームを検討しているのであれば、家族みんなで話し合ってから慎重に決めるようにしましょう。

CHECK POINT
リフォームで使える主な補助金

こどもみらい住宅支援事業、既存住宅における断熱リフォーム支援事業、次世代省エネ建材の実証支援事業、長期優良住宅化リフォーム推進事業、介護・バリアフリーリフォーム補助金、各自治体のリフォーム関連助成金

いまさら聞けないキーワード
リフォーム/リノベーション/建て替えの違い

リノベーション・リフォーム

「リフォーム」と「リノベーション」は混同して使われることも少なくありませんが、厳密には違います。
「リフォーム(Reform)」は建物の老朽化した部分や建物全体を新築時の状態に回復させたり、より使いやすいように改善・改良すること。
「リノベーション(Renovation)」は、一般的にリフォームよりも大がかりな改修を指すことが多く、新たな機能や付加価値を加えること。
「建て替え」は基礎からすべて解体・撤去し、土地を更地の状態にして、一から建物を建てることを指します。

ワンポイント コラム

カーボンニュートラルのイメージ

国土交通省が推進する住宅・建築物の省エネ化「住宅・建築物カーボンニュートラル総合推進事業」

近頃よく聞く「カーボンニュートラル」。ひと言で言えば「温室効果ガス」の排出を「ニュートラル」=0(ゼロ)にしようということです。2015年にパリ協定が採択され、産業革命以降の気温上昇を2℃ないし1.5℃に抑制することが長期目標として掲げられ、世界中で行動が促されているのです。

日本でも「2050年にカーボンニュートラル、脱炭素社会の実現を目指す」ことが宣言されており、国土交通省、経済産業省、環境省の三省が2021年4月に「脱炭素社会に向けた住宅・建築物の省エネ対策等のあり方検討会」を立ち上げました。

国土交通省では住宅・建築物の省エネ化を推進するため、令和4年度当初予算200億円を充て、「住宅・建築物カーボンニュートラル総合推進事業」を立ち上げました。これはLCCM住宅(ライフサイクル全体を通じたCO2排出量をマイナスにする住宅)の整備を支援する新規事業や、地域型住宅グリーン化事業、優良木造建築物等整備推進事業、長期優良住宅化リフォーム推進事業、住宅エコリフォーム推進事業など、省エネ性能の高い住宅・建築物の整備や既存住宅の改修などを総合的に支援するものです。

公営住宅、UR賃貸住宅、公社住宅といった公的賃貸住宅についても既存ストックの改善事業と併せ、地方自治体と連携して省エネ改修や再エネ設備導入などに対しても支援を継続・拡充するとしています。

また、優良な民間都市開発プロジェクトについて、特に調達が困難なミドルリスク資金等の供給の円滑化を図るため、安定的な金利で長期に資金調達ができる仕組みも創設されました。