ZEN CLUB

2023年 05 月号 Number. 553

不動産・建設関係のトレンド

これからどうなる? 「住宅ローン金利」

これからどうなる? 「住宅ローン金利」

長期金利の変動幅が0.5%程度に

住まい購入で住宅ローンを組むとき、迷うのが固定金利または変動金利のどちらにするのかということです。この金利に影響するニュースが、2022年12月に発表されました。金融政策決定会合で、長期金利の変動幅の上限を0.25%から0.5%程度に引き上げられることが決定されたという内容です。これにより、国内の金融機関が続々と固定金利の利上げを発表しています。

なぜ変動金利は変わらずに、固定金利が上がったのでしょうか。そもそも住宅ローンの金利はどう決まるのかということについてご説明しましょう。まず固定金利型は、10年物国債の利回りなどのような長期金利をもとに決められています。一方で変動金利は、日銀の政策金利の影響を受ける短期金利を基準に決まるのです。つまり今回、長期金利の上限が引き上げられたことを受けて、固定金利が連動して上がっているのです。

現在、変動金利よりも固定金利は高め。歴史的な低水準となっている変動金利の今の状況を踏まえると、変動金利を選ぶ方が良く見えます。しかし、金利が低いからといって必ずしも変動金利がいいというわけでもありません。

家計とライフプランを基準に考える

変動金利について知っておきたいことがあります。それは「5年ルール」と「125%ルール」というものです。これは金利が上昇したとしても、5年間は毎月の支払額に変更がない、もしくはたとえ返済額が増えるとしても、変更前の返済額の125%が上限でそれ以上にはならないというものです。大半の金融機関がこの2つのルールを適用しているのですが、適用外の金融機関も。既に変動金利の住宅ローンを組んでいる場合には、このルールが適用されているかどうかを今一度、確認しておくといいでしょう。

変動金利と固定金利の違いを理解したところで、実際、家計のやりくりはどう考えればいいのでしょうか。例えば、3,000万円で借入期間30年、金利0.5%の場合、変動金利で月々の返済金額は8万9756円です。もし金利が1.5%に上昇したら、返済金額は10万3536円に増え、毎月の支払額が1万3780円も増えることになります。

生活していれば、出産や育児、介護など、さまざまなことで支出入にも変化がありますが、果たしてこの差額がどれくらい家計に影響するのでしょうか。負担が大きくなったとしても支払えるのかどうかが肝心です。一方、固定金利の場合、その名の通り、金利が決まっているので月々の支払いは常に同額になります。現時点で変動金利と比べると割高になりますが、毎月の住まいにかかる費用は一定となるので、家計のやりくりはしやすいというメリットがあります。

変動金利を選ぶ場合には備えを

家計のやりくりを考えると、安定している固定金利を選ぶ方が暮らしやすいように思えます。

しかし、やはり毎月の返済金額は少なければ少ないほどありがたいというのも正直なところ。変動金利を選ぶ場合に重要なのは、金利が上がったときのための備えをすることです。変動金利と固定金利を比べたときに安くなった差額分を毎月、別途、積み立てておくのです。

毎月、引き落としにするなどして確実に積み立てておけば、万が一、変動金利が上がったとしても、先にご紹介した「5年ルール」や「125%ルール」が適用されていたなら、すぐに返済額が上がることはありません。たとえ5年後に高くなるとしても、それまでに積み立ててきた金額を返済に充てるようにすれば、いきなり家計が圧迫されるというリスクは少なくなります。

米国の金利上昇に連動する可能性も

では今後、住宅ローンの金利はどうなるのでしょうか。世界情勢も不安定な中で先を見通すことは難しいですが、日銀が利上げをするためには、景気が良い状態であることが欠かせません。国際通貨基金(IMF)によると、日本の経済見通しは悪くありません。2023年度の春闘では賃上げする大手企業も増えています。景気が良くなれば、利上げがされる可能性も否定できません。米国が利上げをする機会があれば、日米の金利差が小さくなり、影響もそれほどでないため、利上げを同じタイミングで行う可能性もあるのです。

世の中の動きが読みづらい今、今後の景気動向を的確に予想するのは困難です。そうした状況の中でも、どうすれば着実に毎月住宅ローンを返済することができるのか。まずは家計の現状をしっかり把握し、ライフプランに合った金利を選び、金利上昇の際に備えておきましょう。