ZEN CLUB

2023年 03 月号 Number. 551

不動産・建設関係のトレンド

ブームも定着、高まるニーズ「 サウナ物件」

ブームも定着、高まるニーズ「 サウナ物件」

風呂好き日本に根付いたサウナ人気

サウナイメージ

立ち昇る蒸気、じんわりと体からにじみ出る汗。2010年代から始まったサウナブームは老若男女に広がり、いまやすっかり定着したようです。

もともと日本はお風呂文化が豊かな国。遡ると奈良時代には、寺院で沐浴の功徳を説くものとして民衆に施浴(せよく)を行っていました。

これが銭湯の原型となりますが、この頃は湯に浸かるのではなく、蒸気で身体の汚れを浮かせて洗い流す「蒸し風呂」でした。江戸時代の銭湯では下半身を湯に浸けるようになりますが、上半身はやはり蒸し風呂。

庶民の憩いの場所として広く愛された様子も、現代のサウナとよく似ているように思えます。

かつての銭湯やサウナの本場フィンランドでは社交場としての役割も大きいものでしたが、今求められているのは、静かに、混雑せず、自分好みの温度で気楽に利用できるサウナ。

予約制のプライベートサウナが増加し、アウトドアブームと相まってキャンプ場や自宅の庭や屋上などで楽しめるコンパクトなサウナテントも話題になりました。そしてさらに「自宅にプライベートサウナを持ちたい」という声も高まり、中古物件のリノベーションでサウナを導入するケースや、サウナをオプションで選べる分譲マンションもすでに登場しています。

サウナはパブリックな施設からパーソナルな設備へと移行してきています。

専門サイト開設初日に登録600人超

おしゃれなサウナ

コロナ禍の影響でサウナ利用者人口は一旦減少しましたが、それでもなお愛好者は現在1500万人前後といわれています。

日本サウナ・温冷浴総合研究所の調査によると、2~3カ月に1回程度サウナに通う「ミドルサウナー」は60.7%が「コロナ禍で利用回数が減った」と回答。対して月に4回以上通う「ヘビーサウナー」では「サウナに行く回数は変わらない/増えた」が「減った」を上回っているというデータも。「月に4回以上サウナに入る人」の中にはほぼ毎日のようにサウナに行く人も含まれており、サウナ付きの物件や好みのサウナが近くにある物件の需要の高まりも見えてきます。

そんな中、2021年11月にはサウナ物件が探せる特化ポータルサイト「サウナ不動産」がオープン。

特に大きな広告を仕掛けたわけでもなく、プレスリリースの配信のみでその日のうちにさまざまなメディアで取り上げられ、初日だけでLINEの登録者が600人を超えました。サウナ関連物件への注目の高さがうかがえます。

「サウナ物件」に集まる注目

自宅サウナイメージ

「サウナ物件」といわれるものは大きく3つのタイプに分けられます。

  1. 居住スペースの中にある「ホームタイプ」
  2. マンションの住人で共有する「共有部タイプ」
  3. 物件から徒歩圏内にサウナがある「周辺タイプ」

注文住宅なら理想のホームサウナが実現できます。サウナストーンに水をかけて蒸気を発生させるフィンランド式「ドライサウナ」や、ミストを熱風とともに噴射する「ミストサウナ」など、種類によって導入費用も異なります。

サウナ室を設置するスペースがない場合も、ミストサウナは天井に埋め込むタイプや壁掛けタイプなどさまざまな種類があり、規模も費用も抑えられます。

かつてはサウナ好きというと中年男性が多いイメージでしたが、最近は女性のサウナ愛好者も急増。おしゃれなショップやカフェスペースを併設したり、ヘアメイクも完了できる充実のパウダールームを備えた個室サウナなど、ラグジュアリー感のある女性向け施設も増えています。

ホームサウナ付きの賃貸物件は希少な上に高額なことが多いので、マンション内の共有設備として付帯していたり、近隣に人気のサウナ施設があって気軽に通えることは物件の大きな魅力となっています。

コロナ禍でサウナに通う頻度が減った愛好者こそ、自宅にサウナがあればと、サウナ物件への関心が高まっています。要望の増加を受けて、今後も
サウナ物件は増加する見通しです。

サウナがジョギングやヨガのように健康維持のツールとして定着すれば、日本のお風呂文化に深く根付くのもそう遠くないかもしれません。