ZEN CLUB

2023年 06 月号 Number. 554

<ZENグループの今>プロジェクトing

株式会社 辰 「(仮称)北青山三丁目プロジェクト新築工事」

一流の建築家と北青山の人の流れを変える

打ち放しのコンクリート建築

 「こだわり建築 施工分野で日本一」をビジョンに掲げるZENグループの株式会社 辰(東京都渋谷区、岩本健寿代表)。「打ち放しコンクリートといえば辰」と称されるなどRC(鉄筋コンクリート)造に特化した建築を得意とする同社が今秋の完成を目指し、東京・北青山で新たなテナントビルを手がけています。このプロジェクトにかける思いを同社第1建築部・池上チーム課長の池上康太さん、同主任の齋藤敏大さん、営業部・営業チーム係長の村上由衣さんに聞きました。

グループの縁から生まれたプロジェクト

『施工の専門店』という特徴を持つ同社。一流の建築家らと手を組み、打ち放しコンクリートで唯一無二の建物を作ることを得意としています。

中でも日本有数のトレンド発信地としてハイセンスな店舗が立ち並ぶ青山・表参道エリアで多数の建築実績があり、エリア一帯が『ショールーム』と言っても過言ではありません。

そのような中、新たに作品として加わるのが、2023年10月、北青山3丁目に完成予定の地上3階、RC造のテナントビル。

建築予定地にはもともと木造二階建ての建物がありましたが、長らく使われないままでした。人通りの絶えない青山通りからわずかに路地へ入るものの、表参道駅から徒歩数分という好立地のため「人の流れが変わるようなテナントビルを建てたい」と施主様が希望。何社かに相談したものの、施主様の希望に沿うプランはなかなかなかったそうです。

そのようなとき、施主様が「辰」の“こだわり建築”をHPで見て興味を持っていたところ、所有する別のビルで管理を担当していたのがZENグループ「ライフポート西洋」だった、という縁があり紹介につながりました。

現場所長として初めての仕事に

施工を担当するのは、株式会社辰第1建築部の池上チーム。リーダーを務める池上課長は「個性的な建物を作りたい」との思いから2008年に入社。

池上チームは現在、3カ所ほどの現場を同時進行で担当しており、池上課長は統括管理を担っています。北青山3丁目のプロジェクトで、今回初めて現場所長に抜擢されたのは入社6年目の齋藤主任。

齋藤主任は大学時代、建築の専攻ではなかったものの、施工管理の仕事に興味を持ち、同社の独特な建物に惹かれて入社を決めたそうです。「最初は何も分からなかったので、2年間ぐらいは現場で職人や所長がどのような仕事をしているのかを見て、体で覚えました」(齋藤主任)。

そのような齋藤主任について池上課長は「分からないながらに頑張っている姿を見守ってきたので、今回のプロジェクトで初めて現場所長となるのを喜ばしく感じました」と語ります。

一方の村上係長は中途採用で2019年に入社。前職は注文木造住宅のインテリアコーディネーターでしたが、「こだわり建築に特化している当社では、著名な建築家やアトリエ系の設計者の方々と仕事をご一緒できるのが魅力でした」と転職理由を話します。

実際に入社後は、自身が一緒に仕事をしたいと感じる建築家のもとへ飛び込みで営業をしに行くこともあるそうです。「これまでの作品を拝見するなどし、お客様のご要望とマッチする建築家の先生がいらっしゃればお願いしに行きます。それが実際に建物になればとても嬉しいです」(村上係長)。

今回のプロジェクトでは営業のほか、施主様の窓口や近隣対応などの現場サポートや地鎮祭の手配なども担当しています。

周辺の活性化につなげたい

今回のプロジェクトでは、設計は表参道の「TIRES(荒川技研工業ショールーム)」などを手がけた田邊曜建築設計事務所・田邊曜氏が手がけました。

1階から3階まで店舗としての利用を見据え、「道路に面した開口部を大きく取りたい」という施主様からのリクエストに応えるため、田邊氏は外部階段とファサード(建物正面から見たときの外観)を一体化させた特徴あるデザインを提案。

「階段が道路レベルから屋上まで続いていくことで2階、3階の店舗にもアクセスしやすく、街の中に小高い丘をつくったような、街と連続していく地形のような建築となるのではないかと考えました」(田邊氏)。

この案を受け取ったときの気持ちについて村上係長は「お客様のご希望を満たす気遣いとチャレンジ精神がデザインに反映されているのが素晴らしく、田邊さんを同世代の女性として応援していることもあり、お仕事をご一緒できて大変うれしかったです」と振り返ります。特徴ある外部階段の施工には難しさも伴いますが「入念な打ち合わせを重ねながら、イメージ通りに仕上げられるよう課題を一つ一つ乗り越えている最中です」(齋藤主任)。

北青山三丁目という環境や地域特性を生かすため、ファサードのデザインがクリアに伝わるような構造、マテリアル、ディテールも考えた、という田邊氏。

例えばテナント部はボイドスラブ工法で梁や柱がなく、スケルトンのままで使える空間を実現。構造設計は構造計画プラス・ワンに依頼し、大きな開口部をとるためにスパンをとばしながらも耐震性能の高い構造としています。

また建物のロゴデザインを野老朝雄氏、照明デザインを岡安泉氏に依頼し、細部まで一貫したコンセプトでデザイン。「隣接する高層ビルの裏通りというイメージが強いのですが、この建築ができることで通り自体が活性化するきっかけになればと期待しています」(田邊氏)。

これに対して齋藤主任は「施主様と田邊さんのイメージ通りに完成させるため頑張っています」と語ります。

「妥協せず、プライドを持って」

青山という立地上、静かで落ち着いた時間を過ごされている方が周辺に多く、騒音や振動には気を遣っているそうです。現場担当者だけで対応が難しいときは村上係長もサポート。「今回は既存物件の解体から弊社で担当しました。近隣の方々には常に挨拶を心がけ、工事車両の搬入などでも迷惑をかけないよう心がけています」(齋藤主任)。

今回のプロジェクトについて池上課長は「完成時の仕上がりが一番重要だと思っていますので、妥協せず、プライドを持って取り組んでいます」とコメント。「社是である“情熱・挑戦・進化”という言葉通り、熱い思いのある弊社で、デザインに凝った建物をこれからも作っていきたいです」と今後の抱負も語ってくれました。

また齋藤主任も「私は現場をまとめる立場ですが、職人さんたちがそれぞれエキスパートですので、分からないところは素直に教えてもらいながら、一緒に頑張っていくという気持ちで働いています。

現場は毎日新しい発見があって面白いです。今後はもっと経験を積んで、より難しい建物に挑戦していきたいです」と意気込みを話してくれました。

村上係長によると、今回のプロジェクトで建築中のビルに入居するテナントも募集中とのこと。また「こだわりの建物を建てたい方はぜひお気軽にお声掛けください」とPRしていました。

ファサードのポイントとなる階段コンクリート打設作業
2023年10月の完成を目指して現在建築中
洗練された街並みの北青山も大通りから少し入ると閑静な住宅街となる
写真左から、第1建築部池上チーム課長 池上康太さん、同主任 齋藤敏大さん、営業部営業チーム係長 村上由衣さん
建築施工の専門店である建築屋「辰」株式会社 辰
〒150-0002東京都渋谷区渋谷3-8-10JS渋谷ビル5階
TEL.03-3486-1570
https://www.esna.co.jp/