ZEN CLUB

2025年 12 月号 Number. 584

<ZENグループの今>プロジェクトing

静岡県静岡市 「THE 収納王」が叶える 新しい賃貸住宅のカタチ

建築制限があっても広々と!

「THE 収納王」が叶える新しい賃貸住宅のカタチ

暮らしを豊かにする住まいづくりを追求し、お客様一人ひとりのこだわりに寄り添う大成ビルド。今回ご紹介するのは、鎌倉市の厳しい建築制限が課せられた土地で、オーナー様の要望に応えるべく数々の難題に挑んだプロジェクトです。中間層で空間活用を行う「THE 収納王」を、初めて賃貸住宅で施工した事例。どのようにして不可能を可能にしたのか、その軌跡を追います。

「THE 収納王」とは?

1階と2階の間に中間層「スキップフロア」を設ける建築方法。限られた土地の中で、収納やホビールームなど、実質的な有効スペースを増やすことが可能です。このフロアは建物の延床面積に算入されず、固定資産税の対象外となるメリットもあります。

中間層「スキップフロア」イメージ
スキップフロアにつながるリビングイメージ
代表取締役社長 津村 聡 Satoshi Tsumura 建設部長 松下 武史 Takeshi Matsushita

床面積の制限がある中でもより快適に過ごせる住まいを

―プロジェクトが始まった経緯を教えてください。

津村:進入路が狭い「旗竿地」に賃貸住宅を建てたいというオーナー様がいらっしゃいました。市の条例で「延床面積300㎡以下」「3階建て不可」という制限がある中で、オーナー様の「入居者の方に、より快適で付加価値の高い住まいを提供したい」という強い思いから、「制限内で最大限の有効スペースを」とご相談いただいたのが始まりです。

松下:そこで私たちが提案したのが「THE 収納王」です。1階と2階の間に中間層を設ける「スキップフロア」構造で、賃貸住宅としては初となります。天井高を1.4m以下に抑えた空間は延床面積に算入されないため、建築制限をクリアしながら、今回の建物では実質的に床面積が約4割アップ。

1階の入居者は本来ロフトを使えませんが、「THE 収納王」により独立したスペースを提供でき、賃貸物件としての価値を高めるプランを計画しました。

旗竿地とは?

道路に接している出入り口部分が細長くなっていて、その奥にまとまった敷地がある土地のこと。重機が入れないため、人の手で部材を運び、組み上げる必要があります。

賃貸住宅(6世帯)の完成イメージ

立ちはだかる「3つの関門」

鎌倉を代表するスポット、鶴岡八幡宮に近い場所での施工でした

― 他にも印象的な部分はありますか?

― 今回の工事で特に苦労された点は何でしたか?

津村:旗竿地という特殊な土地のため、重機などが入れないという課題がありましたが、それ以上に建築開始に至るまでに「3つの関門」がありました。

松下:1つ目は建築許可です。当初、このスキップフロア構造が「実質的な3階建て」と行政に判断され、計画は一度暗礁に乗り上げました。しかし、私たちは諦めず、過去に静岡で許可が下りた同様の事例を元に、民間の確認検査機関とも連携し、「小屋裏収納」の取り扱い基準という条例の解釈を巡って粘り強く交渉を重ねました。その結果、弊社では鎌倉市で初となるこの構造での建築許可を得ることができたんです。「THE 収納王」は、その地域で許可が取れるかどうかも鍵になります。

津村:2つ目は埋蔵文化財です。予定地は鶴岡八幡宮に近い歴史的なエリアで、基礎工事中に遺跡が発見された場合は発掘調査を行う必要があり、計画が大幅に遅延・変更となるリスクがありました。幸い今回は建て替えで、現状の基礎より深く掘削する必要がなく本格的な調査を回避できましたが、着工できるまで気の抜けない状況が続きました。

松下:3つ目は補助金制度です。オーナー様のご希望で、国の「子育て支援型共同住宅推進事業」の補助金を活用することになりましたが、断熱材の性能からコンセントの位置まで、指定の基準をすべて満たす必要がありました。事務局と何度もやり取りを重ね、約1ヶ月半かけて図面が完成。最終的に1,000万円を超える補助金に繋げることができました。

施工中の様子

「らしく、楽しく」住むための空間づくり

―「THE 収納王」は、暮らしにどのような価値をもたらしますか?

松下:単なる収納に留まらないのが、この空間の魅力です。シアタールームや書斎といった「隠れ家」のように活用できますし、災害時の備蓄倉庫としても安心です。また、1階と2階の間に物理的な空間が生まれることで、上階の生活音が下階に響きにくくなるという遮音性の向上にも繋がります。

津村:私たちは、住まいを単なる「箱」だとは考えていません。今回のプロジェクトのように、お客様のこだわりや「こんな暮らしがしたい」という思いを実現するため、どんな課題にも挑戦するのがモットーです。これからも「らしく、楽しく」をテーマに、規制概念にとらわれない自由な発想で、お客様の暮らしを豊かにする空間を提案し続けていきます。

オーナー様の声

丁寧な聞き取りと誠実な対応力で、細部までイメージ通りに仕上げていただき大変満足しています。収納が豊富で、居住スペースを広々と活用できる点も大きな魅力です。子育て世帯を中心に「ここに住んでよかった」と感じていただける快適な住まいとなり、入居者様の人生に長く貢献できることを願っています。

らしく、楽しく、住まう。その思いを私たちの挑戦で形にします。