ZEN CLUB

2025年 11 月号 Number. 583

<ZENグループの今>プロジェクトing

長野県松本市 信州大学 アクア・ リジェネレーション共創研究 センター

水循環やグリーンエネルギーの 研究を目的とした実証実験の重要拠点!

「信州大学アクア・リジェネレーション共創研究センター」を3月に竣工

1階はイベントスペース、2~4階は28室のレンタルラボを備えたセンター。

20年以上にわたって水の研究拠点形成に尽力していた信州大学が、世界的な水不足を解消するための循環システムを構築すべく、その拠点として設立したのが同センター。その建築に白羽の矢が立ったのが、信州大学内の工事に関わった経験のある池田建設株式会社でした。研究に特化した建物にはどのようなこだわりがあるのか、甲信越支店工事所長の臼井さんと監理技術者の駒津さんにお話をうかがいました。

ラボの中では、万博でもデモを展示したという、光触媒で水素と酸素の泡を出す装置が動いていました。
敷地内に在ったヒマラヤスギが勿体ないことから、木製家具として再利用するための素材づくりも担当。
天井がどうなるか分からない時点から、鉄骨に配管を通すための「穴の位置」を慎重に計画していきました。
ロボットラボもすでに3~4室在り、野菜栽培をはじめ画期的な研究を推し進めています。
工事所長 臼井 克彦 Katsuhiko Usui  監理技術者 駒津 晴康 Haruyasu Komatsu

世界を牽引する大学ならではのシンボリズムと機能性

― 先日(7/25)の開所式を終えて、センターが本格始動されていますね。振り返っていかがですか?

臼井:過去には工学部情報工学科棟の改修工事に携わるなど、信州大学さん自体とは縁がありますが、今回のような一棟まるごと新築は新しい挑戦でした。

駒津:弊社は4名体制で、職人への指示出しや設備業者や電気業者の管理、材料の手配、施主や設計者との折衝などが主な業務。スタートしてから約1年3ヶ月での竣工でしたが、それでも納期ギリギリでした。

厚みと色にこだわった床を感慨深そうに眺める臼井さん。ちなみに、各フロアとも間接照明やダウンライトは全て、落ち着きのある温白色を採用。

― 最先端の研究を行うセンターならではの施工ポイントも多いのでは?

臼井: 長野県の中央で様々な連携のハブになりたいという信州大学さんの意気込みは強く、その象徴が水関連の研究室が集中する4階フロア。

水を意識したブルー基調となっており、床については6mmの青のビニル床を特注で手配し、歩行感の良さと耐久性の高さを実現しています。

企業の研究室が多い3階ではアイデアが湧きやすいよう、不規則にカラータイルを配色した『遊び心のある』 ポップな床にしたり、2階は研究に没頭できるようダークグレーを中心にシックなイメージを演出したりと、各フロアでコンセプトを変えているのが特徴です。

駒津: 化学系の実験がメインですので、それに対応できる造りというのも重要視しました。5種類の特殊ガスの配管をほとんどのラボに設置するにあたり、ドラフトチャンバーのダクトをしっかり通せるよう計算しながら天井埋込型を提案。

これは、あらゆる研究設備に対応するための『レイアウトの自由度』を上げたかったからです。

最後に物をいうのは地道な行動と少しの工夫

独自の多色仕上げにより、エイジング調、錆び調、メタリック調などの素材感を再現できるファインFR工法(ファンデーション塗装工法)を採用。

― 他にも印象的な部分はありますか?

臼井:これまで経験のない外壁のファンデーション塗装工法が挙げられます。

まずウールローラーで下塗りを行い、スポンジで石目になるようなパターンを作っていくのですが、手でむしりながらの作業なんです。

一人の職人さんがやらないとパターンが変わってしまうので、時間との戦いでした。設計の初期段階では1階だけの予定でしたが、景観条例の関係で全部やることになり、なかなか神経を使いましたね。

駒津:大プロジェクトだけに設計士も複数いたので、木の色合いがイメージと違うなどの意見が最後まで出ました。

特にゲストを迎え入れる1階イベントスペースには信州大学さんもこだわりがあり、資材探しやサンプル作成には最後まで奔走しました。

臼井:諏訪インターの近くまで木材の写真だけ撮りに行って、設計士に「どうですか?」みたいな繰り返しでしたよ(笑)。

まだまだ通過点に過ぎないと謙遜する二人ですが、心底ホッとした笑顔に工事の大変さがうかがえます。

駒津:配管を隠す外側のルーバーも、結果的に図面と違うものを提案しながら、あの美しくラインの多いブラウンに落ち着きました。

全般的にいえることですが、とにかく手が止まらないよう6エリアくらいに工事箇所を分け、効率的な同時進行をはかっています。

壁、天井、設備などに優先順位を設け、スピーディーに作業員を充てていきました。

臼井:その他、クレーンが届かない場所に鉄骨を掛けていく作業には達成感も。ラボの構造を考慮して、ピット配管にしているため、安易にクレーンを乗せれば重みに耐えられずアウト。東京などではよくある方法ですが、こまめに通路を確保しながら鉄骨を掛けていく地道な作業でした。

仲間と培ったネットワークは今後の事業にも武器となる

―今回の工事を機に、成長した部分や今後の目標などはありますか?

駒津:建物の難易度もさることながら、業者との連携は強化されたように思えます。

臼井:駒津が言う通り、大勢の仲間と協力する大切さを再認識できたことは、自分の成長にも繋がります。鉄骨造の現場が個人的に久々だったので、学びの要素も多かったです。

駒津:会社としてこのような大きなプロジェクトに従事できたことは、次の入札が有利に働くケースが多々あります。

今回のような産学公連携の事業は特に経験値が問われますので、甲信越支店として1年に1回くらいは大規模な工事を継続したいですね。

臼井:そして、今回培ったネットワークを活かせる工事にもっと関わっていければ幸いです。

DATA

所在地
/長野県松本市旭3-1
    (信州大学 松本キャンパス内)
構造
/地上4階建 S造(鉄骨造)
延床面積
/3,618m2
共用設備
/各階コミュニケーションスペース、会議室、女性休憩室
大プロジェクトの経験を活かしてさらに施工技術を磨いていきたい
官公庁から民間オフィスビル、邸宅、社寺等の伝統建築まで建設「池田建設」
池田建設株式会社
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