ZEN CLUB

2025年 06 月号 Number. 578

<ZENグループの今>プロジェクトing

大阪市此花区 クウェート館の施工を担当!

麦島建設 初のパビリオン建設 今話題の「EXPO 2025大阪・関西万博」

クウェート館の施工を担当!

パビリオン内ではプロジェクションマッピングなどを用いた5つの展示室を通じて、湾岸諸国の過去、現在、未来を旅するような没入度の高い体験ができます。

連日盛況の大阪・関西万博(EXPO 2025)の中でも、最大規模の大きさを誇るクウェート館。ここの施工担当として白羽の矢が立ったのが、マンションを筆頭に総合建設業で名を馳せる麦島建設。

急ピッチで進められたという工事に至る経緯や施工時の様子について、現場の作業所長として奮闘した工事部次長・中村さんに話をうかがいました。

工事名称 Pavilion of State of Kuwait at Expo
建築主 Kuwait Ministry of Information
設計 schlaich bergermann partner、徳岡設計
施工 麦島建設
施設規模 S造3階建て延べ3,502m2
工期 2024年2月29日~2025年4月1日

工事部 次長 中村 友彦

名古屋の本社にて課長兼務で十数名の課員を束ねながら、現場の監理等を務める。
これまでの経験値を買われ、パビリオンの作業所長を拝命。
麦島建設としては中村を含め、計3名で参画した。

クウェートってどんな国?

中東のペルシャ湾北西にある小さな国で、砂漠が多く植生が少ないのが特徴。世界有数の石油の埋蔵量、生産量を誇り、輸出額の約9割が石油関連。近年は農業開発にも力を入れるなど産業の多角化を進めています。

開幕までおよそ1年難易度S級の施工が開始

―まずは開幕おめでとうございます。パビリオンの施工に携わった経緯を教えてください。

発端はヌスリというスイスの会社がクウェートにプレゼンし、パビリオンの建築・運営を受注したことでした。

海外の設計図は総じてイメージ図のようなもので、三次元で描くのが主流。しかしそれでは寸法や角度などが分からず、日本の施工基準でいえば実現は不可能なので、二次元化ができて経験も豊富な徳岡設計さん(設計事務所)に声が掛かったのです。

ヌスリからは「特殊な形状を実現できるゼネコンがいない。探してくれないか?」というお願いもあったようで、ちょうど弊社のオーナーと徳岡設計さんの社長が知り合いだったことから、打診があったわけです。

オーナーの一言で決定したのが一昨年の暮れで、私を含め誰もが「想像もつかない」が本音でした。

もちろんパビリオンの施工は初体験ですので、当時次長としてチームを束ねていた私が選ばれ、昨年の3月に着工。ほぼ一年しかない状況での本格始動でした。グループ会社の辰さん、池田建設さんにも一部サポートいただいたので、大変心強かったです。

形状、部材、日程調整パビリオンならではの葛藤

― 初めてということで、苦労も多かったのでは?

― 今回の工事で特に苦労された点は何でしたか?

何と言っても特殊な形状がまず挙げられます。波や砂漠を表現すべく、曲線を用いた複雑な造形が特徴で、特に翼のような外観は顕著な例。

当現場は鉄骨がメインですが、足場を普通に建てるとぶつかる箇所や足りない箇所が出てくるので、何十枚も説明用の図面を用意して、鳶職人たちと入念に情報共有しながらクリアしました。

ドーム内の12mもの高さに適応できる放水型スプリンクラーは、最後まで業者探しに難航。ようやく決定したのは昨年の12月末。

また、建物内の目玉であるドームは非常に天井が高く、しっかり下まで放水できるスプリンクラー探しに難航。

何十社にも問い合わせ、時には他のパビリオンにも相談を行い、ギリギリで設置できました。

その他、パビリオン同士のスケジュール調整は万博らしい大変な業務。

毎週代表者会議を行い、搬入経路や作業日時を確認し合いながら、車両ナンバーや関係者の情報等をその都度申請する作業に追われました。

緻密に計算して進める重要性を、あらためて知るきっかけになったと思います。

曲線がモチーフの複雑な造形ゆえに、足場の図面だけでも10~20枚ほど書きながら、鳶職人との共通認識を強化。

― 海外の方々と進める難しさもありましたか?

通訳を介していると会議は長くなり、文化の違いで熱が入る瞬間もまちまち。

しかし互いに歩み寄りながら、地道に理解するしかないと割り切りました。

さきほど図面の話が出ましたが、2D化したものを再度3D化してドイツの設計者にチェックしてもらうことがあり、「丸みが足りない」とか「もう少し広げる」などのダメ出しが多く、材料発注や加工、組立てが出来ないため、かなり焦りました。

しかし溶接だけ進めるなどの機転を利かせ、工期を短縮。

その他、建物内の展示工事やランドスケープ工事などでは、世界の施工技術を見られるという嬉しい部分もありました。

ドームの内側にスクリーンを貼る際、背面ボードとの間の空気を鮮やかに抜いたり、難解な曲線オブジェをベニヤでサクッとカットしたりなど、多彩なアイデアや手際の良さには驚くことばかりで、学ぶ点が多かったです。

スケール感を知ることで建築の魅力がもっと広がる

― 最後にグループの皆さんへメッセージをお願いします。

最大の使命である、クウェートのイメージ通りに施工することには成功しました。昨年2月に現地を初めて訪れた際は大半が更地でしたので、現在の華やかな光景を見ていると、きめ細かく丁寧で速い日本の施工技術にあらためて驚かされます。写真だけでは分からない『スケール感』は、現地で見るからこそ感動必至。世間ではネガティブなニュースもありましたが、建築の面でも娯楽の面でも注目ポイントは無限大です。ぜひ足を運んでいただき、麦島建設の技術の結晶と、魅力的な各種パビリオンをその目でご覧ください!

初めてづくしの挑戦は、決断の連続。現地で見た世界の施工術は、財産。
  1. パビリオンの設計を行ったドイツのシュライヒ・ベルガーマン・パートナーのスタッフ。
  2. 最大の目玉であるドームでは、プロジェクションマッピングによって真珠採取文化や砂漠の壮大な自然などを再現。
  3. 下が空洞のため、荷重で落ちないように発泡スチロールを入れ込みコンクリートを流した階段は、完成まで実に3ヶ月。
  4. スパイスやハーブを多用した、本格的なクウェート料理を堪能できるレストラン。
マンションから戸建、商業施設、公共施設まで、理想をカタチに「麦島建設」
〒466-0064 名古屋市昭和区鶴舞2-19-10
TEL(052)872-6106
https://www.mugishima.com/